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2021.06.30 むしくさセミナー 藤原

生物多様性研究室M2の藤原です。
明日のむしくさセミナーにて発表させて頂きます。
よろしくお願い致します。

【タイトル】
水田の圃場管理によるクモ類の各ギルドにおける群集構造の変化

【発表者】
生物多様性研究室 M2 藤原祐太

【要旨】
 クモ類は農業生態系におけるジェネラリスト捕食者として害虫防除において重要とされている。これらの生息地として水田畦畔などの半自然草原地は重要な役割を果たす。近年の土地利用変化は農業生態系における生物多様性にとっての脅威となっている。また、放棄地の増加により害虫発生がより深刻化する可能性がある。しかしながら、節足動物群集における影響の調査は十分に行われていない。水田と畦畔におけるクモ類ではこれまでに農法(慣行農法-有機農法)や景観の影響などが調べられているが、圃場自体の形態について注目しているものはない。また、捕食様式として造網性、植物体上狩猟性、地表狩猟性など上下方向にも広く分かれているにもかかわらず、採取形式により対象が植物体上のクモ類に限定されることが多かった。そこで本研究では、京阪神地域の伝統的水田および圃場整備地各15地点(合計30地点)を対象に、水田の管理方法が造網性および狩猟性クモ類にどのような影響を及ぼすかを調査します。今回は調査開始直後のため、調査計画についてお話しさせていただきます。

# by mushikusa | 2021-06-29 23:59

2021.06.30 むしくさセミナー 冨田

生物多様性研究室M2の冨田です。
明日、むしくさセミナーにて自身の研究内容を発表させて頂きます。
よろしくお願い致します。


【タイトル】
圃場整備と耕作放棄が水田畦畔の送粉ネットワーク構造および送粉サービスに与える影響

【発表者】
生物多様性研究室 M2 冨田誠之

【要旨】
 近年、人間活動がもたらす様々な土地利用変化によって、農業生態系における生物多様性の減少が世界的に引き起こされている。動植物の多様性が減少すると、それらの相互関係(ネットワーク)の変化を通じて、生態系由来で人間の利益になる機能(生態系サービス)の低下に繋がりうることが報告されている。その中でも、農作物や在来植物の結実等に必要な花粉を媒介する送粉サービスは重要な役割を果たしている。送粉サービスを形作る送粉者や開花植物の多様性が減少すると、そのネットワーク構造が大きく影響を受けるために、送粉サービスが低下するとされている。
 しかし、日本の水田生態系において、集約化や耕作放棄といった土地利用変化が送粉ネットワーク構造に与える影響はほとんど研究されていない。そこで、阪神地域の水田計15地点を対象に、集約化や耕作放棄が送粉ネットワーク構造および自生植物の送粉サービスにどのような影響を及ぼすのかを目的とした。

# by mushikusa | 2021-06-29 14:11 | むしくさセミナー

2021.06.23 むしくさセミナー 中田

タイトル 多様な都市環境における在来一年生植物の適応戦略の多様性
発表者 生物多様性研究室D1 中田泰地

【要旨】
 21世紀に入り、都市に人口が集中する都市化が世界中で急速に進行している。都市化に伴う人工地面積の増加は、気温やCO2濃度の上昇、土壌の富栄養化や乾燥化など在来植物の生育地環境を大きく変え、在来植物の個体数減少や局所絶滅を引き起こすため、都市域の在来植物の多様性低下は大きな問題となっている。一方で都市環境下で生き残り、都市特有の表現型形質を持つ在来種も報告されており、都市環境への適応進化が示唆されている。
 多くの先行研究では、都市と近隣の農地生態系など半自然生態系の集団を用いた比較を行い、都市の適応進化を議論してきたが、都市域には、残存する水田畦畔や公園、路傍など植物の生育地は多様化しているため単純な都市-農地間の比較では都市適応の全体像を明らかにできない。そこで本研究では、植物の多様な都市生育地環境に着目し、野外環境下でみられる表現型形質の種内変異の定量化、都市環境共通の適応形質や特定の生育地固有の適応形質の遺伝性や環境依存性を明らかにすることを目的とした。



# by mushikusa | 2021-06-22 18:41 | むしくさセミナー

2021.6.23 むしくさセミナー 宮地

明日のむしくさセミナーで発表する宮地です.

よろしくお願い致します.


【タイトル】昆虫の捕脚形態にみられる平行進化の形態測定学的解析

【発表者】進化生態学研究室 M1 宮地ひかる

【要旨】

昆虫には獲物を捕らえることに特化したカマ状の前脚である捕脚を持つ種が存在する.カマキリとミズカマキリのような系統的に遠い種でも捕脚を持つことから,捕脚はそれぞれの昆虫の系統で独立に進化(平行進化)したと考えられる.本研究では,昆虫の前脚に生じるこのような進化を対象に,形態の測定と比較により,昆虫の捕脚に見られる平行進化の様式を明らかにすることを目的とする.

カマキリ,ミズカマキリ,カマキリモドキなどの捕脚を持つ昆虫と,ゴキブリ,マツモムシ,ウスバカゲロウなどそれらに近縁で捕脚を持たない昆虫の形態を比較し,系統間の捕脚形態の差異や,歩脚から捕脚への形態変化の傾向,捕脚の発達に伴う体形態の変化などを評価する.捕脚は獲物を捕らえるという同一の機能を持つため,各系統の捕脚形態は,様々な歩脚形態から類似の捕脚形態へと収斂すると予想される.また,各系統で一般的に見られる歩脚形態(祖先形態)は系統によって異なるため,そこから独立に生じる捕脚への進化の方向性は,系統によって異なると予想される.


# by mushikusa | 2021-06-22 13:14 | むしくさセミナー

2021.06.15 むしくさセミナー 西野

タイトル 性的共食いによる雄の交尾行動調節の適応的意義
発表者 進化生態学研究室B4 西野大翔

明日の、3限に行われるゼミの要旨です。

[要旨]

一妻多夫の種の雄は、配偶者防衛をすることがある。配偶者防衛は、交尾の前後に雄が雌に付き添い、他の雄との交尾を防ごうとする行動である。この行動は,雌の子の父性獲得率を高めることで雄の適応度の増加に寄与しうる。

性的共食いとは、交尾に伴って雌が同種の雄を捕食する現象である。性的共食いは、雌にとって、摂食量を増やし、より栄養を得ることができるという点で適応的である(Herberstein Barry 2008)。一方、性的共食いにより、雄は以後の交尾の機会を奪われる。そのため、雄は性的共食いによる適応度の減少を避ける戦略を進化させると予測される。

 チョウセンカマキリは性的共食いを行う種である。性的共食いをされた雄は、終末投資として交尾時間を延長することや、精子数を増加させることが知られている(長田2020 神戸大修論)。しかし、この性的共食いによって引き起こされる交尾時間の延長が、ライバル雄に対する配偶者防衛として機能するか否かは不明である。そこで、チョウセンカマキリにおいて、性的共食いによって延長される交尾時間は、配偶者防衛として機能し、雄の受精成功を増加させる、という仮説を立てた。そして、この仮説を検証することを目的として,行動実験に基づく研究計画を立案した。


# by mushikusa | 2021-06-15 23:42