バイカツツジの送粉様式と仮雄蕊の機能

日時:2009年12月9日(水)13:20~ G318室
題目:バイカツツジの送粉様式と仮雄蕊の機能
演者:堂囿いくみ(神戸大・人間発達環境学研究科)

 ツツジ属の花は一般的に漏斗状で、5あるいは10本の雄蕊をもつ。同属のバイカツツジの花形態は特異で、花冠は平開し、5本の雄蕊のうち2本が短くなり、花粉をつくらず仮雄蕊化している。他のツツジ類に見られない仮雄蕊という形質に、何らかの適応的意義があると考えられる。本研究では、(1)バイカツツジの開花特性と送粉様式を明らかにしたうえで、(2)送粉における仮雄蕊の機能を明らかにすることを目的とした。
(1)バイカツツジの開花特性と送粉様式
 花はおよそ3日間咲いていた。開花初期に花柱は短く、柱頭は仮雄蕊の近くに位置するが,後期には花柱が伸びて、柱頭が雄蕊の葯に接近した。開花初期に葯は孔開し花粉は放出可能で、開花後期に柱頭が成熟したことから、雄性先熟であることがわかった。また、自家和合性は認められたが、自動自家受粉は認められなかった。訪花昆虫の観察の結果、バイカツツジの主な送粉者はマルハナバチ類であった。
(2)送粉における仮雄蕊の機能
 仮雄蕊の機能を明らかにするため、①仮雄蕊を除去した花を用いて、花の蜜量を操作し一定量にしたうえで、マルハナバチの吸蜜速度を測定したところ、仮雄蕊のある花では吸蜜速度が遅くなった。また、マルハナバチの滞在時間は仮雄蕊のある花で長く、花上で回転行動をする頻度が高かった。②仮雄蕊を除去した花を用いて、マルハナバチが一回訪花したときの花粉残存量を比較したところ、仮雄蕊の有無は花粉残存量に影響しなかった。さらに、開花初期(花柱短い)と後期(花柱長い)において、仮雄蕊と雄蕊の葯(自花花粉)をそれぞれ除去し、マルハナバチの一回訪花による結実率を調査した。結果,開花初期には仮雄蕊があると結実率は低いが、後期には仮雄蕊の有無は結実率に影響しなかった。また,開花後期の自花花粉のある花では結実率が高くなる傾向があった。
 以上の結果より、仮雄蕊はマルハナバチの吸蜜を邪魔し、花の蜜量減少を防ぎ、蜜分泌へのコストを減らしていると考えられる。また仮雄蕊は、開花初期の自花花粉による受粉(自殖)を回避していると考えられる。開花後期においては、仮雄蕊の結実率や花粉残存量への影響は見られなかったが、仮雄蕊はマルハナバチの回転行動を促し、マルハナバチの体と葯との接触を高めている可能性があり、多数回の訪花においては、開花後期の結実率を高めているかもしれない。


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# by mushikusa | 2009-12-08 21:54

神戸市内の都市緑地における徘徊性昆虫類の多様性

日時:2009年10月14日(水)13:20~ G318室
題目:神戸市内の都市緑地における徘徊性昆虫類の多様性
演者:丑丸敦史

現在、地球上の至る場所で開発等の人間活動によって著しい生物多様性の低下が引き起こされている。特に、都市開発はその場所の生物の生育環境を大きく変化させてしまう。そのため一般的に都市の中の生物多様性は、周辺の原生的、もしくは二次的自然環境よりも貧弱化している(Niemela et al. 2002)。この状況下で、公園や社寺林などの都市緑地はさまざまな野生生物の生息地としての役割を持ち、都市の中で生物多様性を残す場となっている。それぞれの都市緑地は市街地によって分断化されており、生物多様性が高く都市部への生物移入の源となる巨大緑地からの距離がそれぞれ異なっている。また、緑地間で植被率や構成植物種の多様性に大きな差がみられる。これら植被率、構成植物種による階層構造の発達等は都市緑地の生物多様性を決定する重要な要因として考えられている(島田ら 1991)。これまでの研究からは、(1)巨大緑地からより近い、(2)より面積が広い、(3)より植物種多様性が高い都市緑地で生物多様性が高くなるパターンが予測されている。これらのパタンが神戸市内の都市緑地でもみられるのかどうか巨大緑地を背後にもつ神戸市の都市緑地(2つの社寺林と16の公園)で研究を行った。その結果緑被率の高い公園でより徘徊性昆虫の多様性が高かったが、巨大緑地である六甲山系からの距離は公園内の徘徊性昆虫の多様性に影響を与えてなかった。
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# by mushikusa | 2009-10-19 11:21 | むしくさセミナー

酪農学園大学の矢吹哲夫さんによるセミナー

7月29日のセミナーは第211回 自然環境論セミナーへの参加になります。

13時20分〜
矢吹哲夫氏 (酪農学園大学)
「エントロピーによる太陽光下での光合成の最大効率の解析」

<要旨>
周知のように、光合成は二重の意味で地球生命環境に貢献している。一つは生命エネルギーの供給源として、一つは二酸化炭素の吸収源としての貢献である。それ故、この光合成のエネル ギー効率を解析、評価することは意義あることである。本セミナーでは、光合成のエネルギー効率について以下の2点に分けて報告したい。
(1)量子収量データに基づいた光合成の実際のエネルギー効率の定式化と計算
(2)太陽光のエントロピー計算に基づいた光合成の最大エネルギー効率の定式化と計算
特に(2)について、表面温度5780Kの太陽から15000万km離れた地球に届いたときの太陽光のもつエントロピーを定量的に評価することで、その太陽光で行なわれる光合成の最大効率 を評価する理論式を提起しその理論式に基づいた計算結果を紹介する。計算の結果、(1)で求めた光合成の実際のエネルギー効率が20%前後であるのに対して(2)で求めた最大エネ ルギー効率は約76%となり、両者の間には大きな差があることが分かった。

連絡先:蛯名邦禎
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# by mushikusa | 2009-07-28 23:32 | むしくさセミナー

修論経過報告

日時:2009年7月8日(水)13:20~ G318室
題目:里草地環境と植物多様性の関係について
演者:植松 裕太(丑丸研・M2)

人為的な管理によって伝統的に維持されてきた里草地は、多くの生物にとって重要な生息場となっている。しかし近年、管理手法の近代化や放棄に伴ってその環境は変質し、多くの生物が絶滅の危機に瀕している。
里草地の保全のためには継続的かつ適度な管理が必要とされるが、その面積は広大である。効率的な保全計画立案のためには、特に生物多様性のポテンシャルが高い場所を特定する必要がある。
現在、圃場整備地において植物の多様性が低いことは明らかになっているが、非整備地内での多様性の高低に関する情報はほとんどない。

本研究では、非整備地の棚田において植生調査、土壌水分量及び栄養塩の測定等を行い、植物多様性と環境条件との関係を調べた。
本日は、解析の進捗状況について報告する。
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# by mushikusa | 2009-07-08 15:24 | むしくさセミナー

有性生殖の維持 − 多くの仮説達

日時:2009年7月1日(水)13:20~ G318室
題目:有性生殖の維持 − 多くの仮説達
演者:丑丸 敦史(神戸大・人間発達環境学研究科)

有性生殖は真核生物の共通祖先に生じ,真核生物の中で幅広くみられる生殖法である. しかし,有性生殖には古典的な,また遺伝的な2倍のコストや繁殖相手を捜すコストを始め多くのコストが伴うことが知られている.このように有性生殖には多くのコストが伴うにも関わらず,なぜ真核生物で有性生殖が普遍的にみられるのか?以下にこの有性生殖のパラドクスについてこれまで提唱されてきた多くの仮説について近年どのように考えられているのかについて複数の論文レビューをおこなう.
 その中で,負のエピスタシス仮説や赤の女王仮説は成立する条件が非常に限定的であること,近年になって有性生殖と遺伝構造の関係が注目を集めていることを紹介する.

参考文献
Agrawal A. (2006) Evolution of sex. Current Biology, vol. 16, pp. R696-R704.
de Visser J.A. and Elena S.F. (2007) The evolution of sex: empirical insights into the
     role of epistasis and drift. Nature Reviews Genetics, vol. 8, pp. 139-149.
Otto S.P. and Gerstein A.C. (2006) Why have sex? The population genetics of sex and  
     recombination. Biochemical Society Transactions, vol. 34, pp. 519-522.
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# by mushikusa | 2009-06-30 21:49 | むしくさセミナー