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今週のセミナー

日時:2010年4月2日(水) 13:20~
題目:短枝の長枝化による成熟木の樹冠維持
    日本の森林における樹木の幹肥大成長量と死亡率の地理パターン
                -遷移ニッチ説の検討
                               (丑丸研:石原正恵 PD)
    研究計画
                                (丑丸研:泉沢 B4)


短枝の長枝化による成熟木の樹冠維持
                                  (石原正恵) 
樹木の樹冠発達は樹木の物質生産を左右するため、稚樹を対象に成長戦略という視点から研究が行われてきた。これに対し本研究では、成熟木の樹冠発達に着目し、稚樹とは異なる発達様式であること、成長ではなく繁殖や樹冠の維持という機能を持っていることを明らかにした。発表では、ウダイカンバ(カバノキ科)において、短枝(極端に短い枝)から長枝が頻繁に伸び、樹冠の拡大を抑えつつ樹冠を維持する効果があることを紹介する。これは、樹木が最大サイズに達したのちも、生き続けるメカニズムの一つとして重要だと考えられる。
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日本の森林における樹木の幹肥大成長量と死亡率の地理パターン-遷移ニッチ説の検討
                                               (石原正恵)
樹木の種多様性の維持機構として、遷移ニッチ説が提唱されてきた。種間で成長速度と生存率の間にトレードオフ関係があるため、森林内において光などの環境条件がよい場所では、成長が速く短命で死亡率の高い種(遷移初期的な種)が、成長が遅く死亡率の低い種(遷移後期的な種)より優占する。一方、環境条件の悪い場所では、遷移後期的な種が優占する。これに対し、近年、種多様性の維持機構として統合中立説が提唱された。この説では、死亡率や出生率などの種間差は種多様性の維持にとって重要ではなく、種は同等と見なせると考える。本研究は、亜寒帯から亜熱帯の14箇所の森林において、遷移ニッチ説の妥当性と統合中立説の仮定の妥当性を検討した。日本列島スケールでの種多様性の変異は、遷移ニッチ説では説明できないと考えられた。また成長速度や死亡率の種間変異の小さい森林も見られ、熱帯以外の森林でも統合中立説の仮定が成り立つ可能性が示唆された。今後、熱帯林以外でも統合中立説とニッチ説の相対的重要度を明らかにする必要がある。最後に、研究計画を発表する。
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by mushikusa | 2010-04-27 11:35 | むしくさセミナー

これまでの研究発表

日時:2010年4月21日(水) 13:20~
題目:阪神地区におけるトノサマガエル集団の遺伝的構造
      ~生息地周辺の景観が与える影響~  (丑丸研:道本久美子 M1)
    ネジバナにおける隣花受粉による自殖の増加
                               (丑丸研:深田ちひろ M1)


阪神地区におけるトノサマガエル集団の遺伝的構造
   ~生息地周辺の景観が与える影響~   (道本久美子)

都市化に伴う生態系の改変は、深刻な生物多様性の減少の原因の1つとして指摘されている。都市化は、生物の生息地である緑地、農地面積の縮小や、破壊による連続した生息地の分断化などを通じて、生物の個体数を大きく減少させる。またこのような影響は生物集団の遺伝的多様性も減少させうる。集団内の遺伝的多様性の減少は、変化する環境への集団の適応力を低下させたり、近親交配を通じて個体の適応度を低下させるなど、長期的にみると存続に関わる様々な問題を引き起こす。そのため都市において人間活動が生物集団の遺伝的多様性に与える影響について理解することは、生物多様性保全を考える上で重要である。なかでも両生類は都市化に伴う環境変化によって個体数が減少しやすいといわれており、集団の遺伝的多様性が失われやすいと考えられる。
 本研究では、阪神地区の里山域から都市部にかけて水田に生息するトノサマガエル集団を対象に、マイクロサテライトマーカーを用いた遺伝解析と水田周辺の景観構造による遺伝的構造への影響の解析を行った。その結果から、トノサマガエルの集団内の遺伝的多様性や集団間の遺伝子流動を維持できる景観構造を明らかにし、集団を健全に維持し続けることのできる環境の条件について考察した。



ネジバナにおける隣花受粉による自殖の増加  (深田ちひろ)

被子植物では7割以上の種が雌雄蕊を併せ持つ両性花を咲かせる。両性花は繁殖しやすいことが利点であるが、個体内で花粉が移動する自家受粉や自殖をしやすいことが欠点である。自殖することによって、送粉効率の低下や近交弱勢による子供個体の適応度の減少をもたらすことがあることが知られている。自殖を避けるための形質を進化させてきた植物種であっても、多くの花を同時に咲かせる場合、個体内での花から花へ自家花粉が運ばれる隣花受粉を回避することはできない。その隣花受粉は、花粉減価や胚珠の減少、花粉親の減少など様々な負の影響を及ぼす。植物は負の影響を及ぼす隣花受粉を回避するために雌雄異熟や雌雄異株などの形質を進化させてきた。しかしながら、隣花受粉は様々な花の形質や花序の形質によって増加することが知られている。隣家受粉を増加させる花の形質、花序の形質としては花の数や花序構造、花の位置が挙げられる。
 本研究では、自家和合性の他殖植物であるネジバナを対象として、花序サイズ、花序構造である花と花の間の角度である螺旋角、花の位置の3つの形質を調査した。またマイクロサテライトマーカーを開発、種子解析をし、隣花受粉による自殖がどのような形質によって引き起こされているのかを調査、考察を行った。
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by mushikusa | 2010-04-20 14:01 | むしくさセミナー

これまでの研究発表

日時:2010年4月14日(水) 13:20~ 
題目:金沢大学角間キャンパスの法面に生育する植物の種類相と被度
                                 (丑丸研:髙野智央 M1)
    虫媒花植物の訪花者と体表付着花粉から見た送粉ネットワーク
                                 (丑丸研:日下石碧 M1)


金沢大学角間キャンパスの法面に生育する植物の種類相と被度(髙野智央)

法面(のりめん)とは自然地山を切り土した斜面(切土法面)や盛り土の斜面部(盛土法面)である。これら法面には雨水の浸食や浸透から守ったり、あるいは風化するのを防ぐために法面保護工が施されている。同時に法面は、良好な環境や景観の保全という役割も担っており、多くの法面は緑化されている。しかしこの緑化には安価で成長が早いなどという理由で外来植物が用いられことが多く、必ずしも生物多様性に配慮したものではない。
金沢大学角間キャンパスは金沢市郊外の丘陵地に新たな土地開発により設置された。そのためキャンパス内には多数の法面があり、その面積は広大な角間キャンパス全体の約10%を占める。キャンパス内の法面はクズや外来性植物の被覆が目立ち、景観的にも生物多様性の観点からも優れているとは言えない。
そこで本研究では法面の現状把握と生物多様性にも配慮した管理方法の基礎資料を得るため、角間キャンパス内法面の植物について調査を実施した。



虫媒花植物の訪花者と体表付着花粉から見た送粉ネットワーク(日下石碧)
 
植物の花粉は主に風、水、動物(昆虫、鳥など)によって運ばれる。送粉を動物に依存している植物にとって、自花を訪れた個体には確実に同種他個体の花を訪花してもらわなければ、送粉の効率が悪い。そのため、ある植物では特定の送粉昆虫に適応して共進化する傾向がみられる。一方で、特定の昆虫に対する特異的な送粉関係は、その昆虫がいなくなれば結実できないという危うさも持ち合わせている。従って、植物と訪花昆虫の繋がり、及び、その複雑さを明らかにすることは重要である。そこで本研究では、昆虫体表付着花粉に着目して送粉生態系における送粉ネットワークを明らかにした。加えて昆虫の体表付着花粉を分離する方法を確立し、その有効性も検証した。
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by mushikusa | 2010-04-12 17:53 | むしくさセミナー