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有性生殖の維持 − 多くの仮説達

日時:2009年7月1日(水)13:20~ G318室
題目:有性生殖の維持 − 多くの仮説達
演者:丑丸 敦史(神戸大・人間発達環境学研究科)

有性生殖は真核生物の共通祖先に生じ,真核生物の中で幅広くみられる生殖法である. しかし,有性生殖には古典的な,また遺伝的な2倍のコストや繁殖相手を捜すコストを始め多くのコストが伴うことが知られている.このように有性生殖には多くのコストが伴うにも関わらず,なぜ真核生物で有性生殖が普遍的にみられるのか?以下にこの有性生殖のパラドクスについてこれまで提唱されてきた多くの仮説について近年どのように考えられているのかについて複数の論文レビューをおこなう.
 その中で,負のエピスタシス仮説や赤の女王仮説は成立する条件が非常に限定的であること,近年になって有性生殖と遺伝構造の関係が注目を集めていることを紹介する.

参考文献
Agrawal A. (2006) Evolution of sex. Current Biology, vol. 16, pp. R696-R704.
de Visser J.A. and Elena S.F. (2007) The evolution of sex: empirical insights into the
     role of epistasis and drift. Nature Reviews Genetics, vol. 8, pp. 139-149.
Otto S.P. and Gerstein A.C. (2006) Why have sex? The population genetics of sex and  
     recombination. Biochemical Society Transactions, vol. 34, pp. 519-522.
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by mushikusa | 2009-06-30 21:49 | むしくさセミナー

イヌヤマハッカ群(シソ科ヤマハッカ属)の花筒長変異と遺伝的分化

日時:2009年6月17日(水)13:20~ G318室
題目:イヌヤマハッカ群(シソ科ヤマハッカ属)の花筒長変異と遺伝的分化
演者:堂囿いくみ(神戸大・人間発達環境学研究科)

 シソ科ヤマハッカ属のイヌヤマハッカ群は、花筒長の地理的変異が大きく、その変異は送粉者マルハナバチの口吻長と対応がみられる。3種の送粉者マルハナバチは、口吻の長さと生息する標高が異なっている。本研究では、この送粉者相の違いが、イヌヤマハッカ群の花筒長変異と遺伝的変異に影響しているかどうかを明らかにすることを目的とした。
 イヌヤマハッカ群15集団において、花筒の長さを測定し、アロザイム酵素多型解析を行った。結果、集団間で花筒の長さは有意に違いがみられ、集団間の遺伝的分化は有意に高かった(Gst = 0.36)。集団間の形態的,遺伝的分化に影響する要因を明らかにするため、パス解析をおこなったところ、集団の標高差は花筒長の差と相関がみられた。よって、口吻長の違うマルハナバチの標高による分布の違いが、花筒の長さへの選択圧として働いていたと考えられる。また、集団の標高差は遺伝的距離と有意に相関しているが、花筒長の差は遺伝的距離と相関はみられなかった。よって、標高によるマルハナバチ相の違いは花粉の移動を制限し、集団間の遺伝的分化を引き起したと考えられるが、花筒長に対応した選択的訪花は,遺伝的分化には寄与していないことが明らかとなった。

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イヌヤマハッカ(富士市)とミヤママルハナバチ
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by mushikusa | 2009-06-15 22:16 | むしくさセミナー

研究計画発表

修士研究計画発表 
日時: 2009年6月10日(水)13:20~ G318室
題目: 里山林縁部の物理環境が草本種に与える影響
演者: 小原亮平 丑丸研M1

今年行う調査方法を中心に研究計画を紹介し、議論したいと思います。

研究内容
多様な草本種を育む里山の中で、林縁部の環境を好む草本種がいることが知られている。私は修士課程を通してそれらの草本種が要求する林縁環境の解明を目的とし、林縁特有の草本群集が存在する林縁はどのうような環境か、またその中で絶滅が危惧される草本種はどのような環境に現れるのかを解明したい。

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by mushikusa | 2009-06-08 14:11 | むしくさセミナー

生殖隔離の非対称性が遺伝子浸透の方向性に及ぼす影響

日時: 2009年6月3日(水)13:20~ G318室
題目: 生殖隔離の非対称性が遺伝子浸透の方向性に及ぼす影響
演者: 高見泰興(神戸大・人間発達環境学研究科)

要旨: 近縁種間の生殖隔離機構を明らかにすることは,生物の多様化をもたらす種分化のしくみを知る上で重要である.本研究は,オサムシ類の生殖隔離機構の実態を,遺伝子浸透に及ぼす影響という視点から理解することを目指すものである.
 ヤマトオサムシとクロオサムシは,本州中部において側所的に分布を接している.また,種間交雑を通じて,クロオサムシ由来のミトコンドリアがヤマトオサムシの集団内に広く浸透している.このような分布と交雑の状態は,以下のような生殖隔離の状態を示唆する:つまり,両種間の生殖隔離は,(1)交雑による種の融合を妨げられるほど強い;(2)しかし,遺伝子浸透を妨げられるほど完璧ではない;(3)さらに,一方向的な遺伝子浸透をもたらすように非対称である.これらの可能性を検証するため,種間交配実験によって生殖隔離の強さを推定した.
 実験の結果,両種間の生殖隔離指数は0.886(クロ雌×ヤマト雄),0.964(ヤマト雌×クロ雄)と高かった.しかし,様々な種間交雑様式を示す同属他種ペアと比較すると,ミトコンドリアの浸透を妨げるほど高くはなかった.よって仮説(1)と(2)は支持された.
 ミトコンドリアは母性遺伝するため,非対称なミトコンドリア遺伝子浸透が生じる時には,ミトコンドリアの送り手の種(この場合クロ)が雌になった場合に交雑が起こりやすい(=隔離指数が低い)はずであると期待される.「クロ雌×ヤマト雄」の生殖隔離指数(0.886)は,予想通り他方(0.964)よりも低かったが,この差は有意ではなく,仮説(3)は支持されなかった.しかし,生殖隔離を交配前,交配後接合前,接合後の各段階に分けると,交配後接合前の段階において有意な非対称性が見いだされた.このような生殖隔離の非対称性が,遺伝子浸透の方向性に及ぼす影響について考察する.
文献: Takami et al. (2007) Population Ecology 49, 337-346.
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by mushikusa | 2009-06-02 21:39 | むしくさセミナー