日時:4月25日(水) 13:20〜 M1 丸山航
題目:『精子競争におけるイワワキオサムシの雄の投資調節;雌の交尾経験に対する変化』 精子競争は,雌が複数の雄と交配し,精子が受精を巡って競争するときに生じる.また精子競争は,配偶行動の進化を促す力としても広く認識されている. 精子競争では,雄は多くの精子を多くの雌に送ることで受精の獲得において有利になるはずである.しかし雄にとって精子生産はコストであり,精子数は有限であるため,実際には多くの精子を多くの雌に投資することはできないと考えられる.そのため,雄はライバルの有無によって投資量を調節している可能性がある. Parker(1997)の理論によると,雄は未交尾の雌よりも,既交尾の雌に多くの精子を送ると予測されている.これは,ライバルの存在下では競争に勝つために多くの投資をした方が有利であると考えられるからである.しかし,最近のメタアナリシスの研究によると,多くの動物の雄は未交尾の雌に多くの投資をする傾向があることがわかった.このような雄の投資調節の違いは,種によって精子競争のメカニズムが異なるためかもしれない.そのため,種ごとの交尾行動や精子競争の特徴を考慮した上で,投資調節の仕方を比較検討する必要がある. オオオサムシ亜属は,種間で繁殖戦略が異なり,精子競争の比較研究に適した材料である.前年度の研究では,本亜属のイワワキオサムシを用いて,雌の交尾経験に対する雄の投資調節の変化を調べた.その結果,雄は既交尾の雌により多くの精子を投資することがわかった.この結果は,イワワキオサムシの雄が雌の交尾経験に応じて投資を調節していることを示唆するものである. 今年の研究では,イワワキオサムシにおける精包置換率や父性獲得率の検証,近縁種を用いた雄の投資調節の比較を目的として取り組む.
by mushikusa
| 2012-04-23 19:45
| むしくさセミナー
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